prologue
あれは、そう___
性転換騒動からの、銀さんと土方さん入れ替わりからはじまった、全員シャッフル騒動もおさまって暫くしてからのこと。
僕ら、万事屋は吉原に来ていた。この地下都市を鳳仙の支配から解放して以来、この街の救世主である僕らは、一方で吉原が重要なクライアントにもなっていた。と言うのも、万事屋は安定企業ではない上に社長がちゃらんぽらんなおかげで毎日がジリ貧で、トーストおかずにごはんとか、定春のドッグフードを取り合ったりなんて生活が何日も続くのが珍しくない。そんな時は決まって神楽ちゃんが月詠さんに泣きつくので、見かねた月詠さんが吉原の中で仕事を見つけては、依頼してくれていたからだ。
吉原には馴染みの出入り職人がいる。その人たちの領域を侵さない程度の簡単な仕事や急な人手不足の穴埋め、晴太君の家庭教師などなど。それも決して安定的な依頼ではなかったけれど、万事屋という名に相応しい長閑な仕事が多いから、僕は存外、吉原での仕事が気に入ってもいた。それに、そんな時はひのやで夕飯もご相伴にあずかるのが恒例となっていたので、正直な話、吉原で仕事は渡りに船だ。日輪さんが腕をふるった手料理がおまけにつく仕事、こんな美味しい仕事はない。仕事を貰って、夕飯までご馳走になって。神楽ちゃんは上機嫌、僕も嬉しいけれど、反面、なんだか情けなくもある。どっちが救世主だかわかりゃしない、銀さんにもっとしっかり営業しなきゃと発破をかけても根っからの怠け者はプライドで飯が食えるわけじゃなし、と、一向に気にしない。他人の好意を無にするなとか、都合のいい理屈で、月詠さん、日輪さんにおんぶにだっこを享受している。
そんなある日、一仕事を終えて、ひのやの店先で夕飯までの時間を潰していた時、それは起こった___